blog
理念はあるのに伝わらない ──保育園のブランディングで起こりがちな“すれ違い”
保育園や保育法人とお話しする中で、
「理念は大切にしているはずなのに、
現場や採用の場で、うまく伝わっていない気がする」
という声をよく耳にします。この背景には、
理念の内容そのものというよりも、
理念の扱われ方に理由があることが少なくありません。
理念が「正しい言葉」であるほど、距離が生まれることもある
理念には、
普遍的で大切な言葉が多く並びます。
- 子どもを尊ぶ
- 一人ひとりを大切にする
- 主体性を育む
どれも間違いのない言葉です。
ただ現場では、
「それが、今日のこの場面ではどういう行動になるのか」
が見えないと、判断の軸として使いづらくなります。
その結果、理念が
- 掲示されている
- 研修で共有されている
- けれど日常では意識されにくい
という状態になってしまうことがあります。
浸透していないのではなく、翻訳されていないだけかもしれない
理念が伝わらない理由を、
職員の理解不足や意識の問題にしてしまうと、
本質から少し離れてしまいます。
実際には、
- 日々の保育の中で
- 知らず知らずのうちに
- 理念に基づいた行動が行われている
ケースがほとんどです。ただ、それが
「どの行動が、どの理念につながっているのか」
という形で共有されていないために、
理念と日常が結びつかずにいるのです。
理念は、すでに現場で息づいている
多くの保育園では、
理念は“まだ浸透していない”のではなく、
浸透していることに気づく機会がなかった
という状態に近いと感じます。
日常の保育エピソードを拾い上げ、
それがどんな価値につながっているのかを言葉にする。
そのプロセスを経ることで、
職員の中に
「自分たちがやってきたことは、意味のあることだった」
という実感が生まれていきます。
この実感が、
採用や組織づくりの土台になることは少なくありません。
▶︎ 理念は“掲げる言葉”ではなく、
“現場で使われる共通言語”であると、職員みんなで確かめた研修事例はこちら
【執筆】豊福 竜大(Tatsuhiro Toyofuku)/執行役員
外資系大手製薬企業に12年間勤務。人と組織の関係性を見つめ続け、2023年よりcrackに参画。
保育業界における生成AI活用とブランディングプロジェクトを統括し、認定こども園協会・東京都民間保育協会等での講演やコラム執筆を通じて、現場発のDXと理念の再構築を推進している。東京都民間保育協会は東京都の社会福祉法人保育事業者約2000法人が加盟する都内最大級の保育団体であるが、豊福のDXにまつわる講演は毎回人気を博しており、3分で30席のチケット完売するという盛況ぶり。
独自のブランディング手法を確立し、外部の声をもとに価値を再構築。理念をアートとして可視化することで、組織の誇りを取り戻す支援を行う。
自らが crackの思想を体現し、その魅力を語ることで共感を生む。理念を語ることで発注が生まれ、経営者が涙する現場を幾度も見届けてきた。「自社を自慢できない社員をゼロにする」その精神を胸に、チームと現場をつなぐディレクターとして、企業と人の“誇りの接続”を描き続けている。仲間からは“BIG BABY”と呼ばれ、その柔らかさと情熱が、組織に新しい風をもたらす。