blog
条件で集める採用が、運送業界を苦しめてきた
「理念に惹かれて人が集まる会社」は、何が違うのか
「給与は地域相場より悪くないはず」
「休日日数も、以前より増やしている」
「仕事内容も正直に書いている」
それでも、応募が来ない。
来たとしても、すぐ辞めてしまう。
運送業界や製造業の採用担当者から、こうした声を聞くことは珍しくありません。
実際、「製造業 採用 難しい」「運送業 人手不足」といった言葉が、半ば決まり文句のように使われています。
ですが、ここで一度立ち止まって考えてみたいのです。
本当に、条件が原因なのでしょうか。
「条件を良くすれば人は集まる」は、もう通用しない
これまで多くの企業は、採用の改善策として
- 給与を少し上げる
- 休日を増やす
- 福利厚生を整える
といった“条件面の改善”に取り組んできました。
もちろん、条件が悪すぎれば人は集まりません。
しかし今、多くの企業が感じている通り、条件を改善しても採用が劇的に良くなる時代ではなくなっています。
なぜなら、条件は
- 比較されやすく
- 差別化しづらく
- いずれ慣れられてしまう
からです。条件で集まった人材は、
より良い条件があれば、そちらへ移る。
これは決して個人の問題ではなく、構造の問題です。
条件採用が生み出す「静かなミスマッチ」
条件重視の採用が続くと、企業の中で次のようなことが起こります。
- 仕事や価値観への理解が浅いまま入社する
- 「思っていたのと違う」と感じやすい
- 会社側も「なぜ辞めるのか分からない」と感じる
特に運送業界では、
- 現場での判断
- お客様との関係性
- チームワーク
といった、言葉にしづらい価値観が仕事の質を左右します。
ここが共有されていない状態で入社すると、
本人も会社も、少しずつ違和感を溜め込むことになります。
結果として、
- 採用しても定着しない
- 現場に疲弊感が残る
- 「また辞めた」という空気が広がる
という悪循環に陥ってしまうのです。
採用が変わり始めた会社が、条件の前に向き合ったもの
一方で、同じ運送業界でも、採用の質が明らかに変わってきた企業があります。
彼らが最初にやったのは、条件改善でも、派手な採用施策でもありませんでした。
向き合ったのは、「自分たちは、どんな会社なのか」という問いです。
- 何を大切にしてきた会社なのか
- 仕事を通して、何を良しとしているのか
- どんな姿勢の人と、一緒に働きたいのか
これらを言葉にし、社内で共有し始めたとき、採用の軸が変わっていきました。
「理念に惹かれて集まる採用」が生まれる瞬間
理念と聞くと、
- 抽象的
- きれいごと
- 現場とは遠い
そんな印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし、採用において機能する理念とは、
会社が日々の仕事の中で、本当に大切にしている判断基準のことです。
- お客様にどう向き合うか
- 仲間にどう接するか
- 仕事をどう終わらせるか
こうした“日常の選択”が言語化されると、求職者は条件以外の判断材料を持てるようになります。
「ここで働く自分が想像できる」
「この考え方、好きだな」
そんな共感が生まれたとき、採用の質は大きく変わります。
条件を語らなくなったわけではない
誤解してほしくないのは、
条件を無視する採用に切り替えたわけではないという点です。
条件は、あくまで土台。
その上に、
- 価値観
- 空気感
- 誇り
が乗って、初めて「選ばれる理由」になります。条件だけを前に出していたときは見えなかった会社の輪郭が、理念を軸にすることで、はっきりしてくるのです。
運送業界で起きた、採用の質の変化
実際、地方にあるある運送会社では、
- 以前は条件重視で採用
- 応募は少なく、定着もしない
- 採用担当者も疲弊していた
という状況が続いていました。
そこから、
- 自社の価値を掘り下げ
- 社員自身が「なぜこの会社で働いているのか」を言葉にし
- その考え方を発信していく
というプロセスを経て、採用の景色が変わっていきます。
応募数が増えただけでなく、
- 若い世代
- 女性ドライバー
といった、これまで出会えなかった層からも応募が来るようになりました。「条件が良かったから」ではなく、
「考え方や雰囲気に惹かれたから」
という理由で。
採用は「会社からのメッセージ」
採用活動とは、突き詰めれば
「私たちは、こんな会社です」というメッセージを社会に出す行為です。
条件だけを語ると、
「条件で選んでください」というメッセージになります。
理念や価値観を語ると、
「この考え方に共感する人と、一緒に働きたい」というメッセージになります。
どちらのメッセージを出すかで、集まる人材はまったく変わります。
まとめ|条件を変える前に、軸を変えてみる
もし今、
- 条件は整えているのに採用がうまくいかない
- 入っても定着しない
- 採用が消耗戦になっている
と感じているなら、
一度、採用の“軸”そのものを見直してみてください。
条件を変える前に、
「この会社は、何を大切にしているのか」を言葉にできているか。そこに向き合うことで、
採用は量だけでなく、質も変わり始めます。
▶ 条件採用から抜け出した、運送会社のリアルな事例はこちら
【執筆】大野 陣(Jin Ono)/代表取締役
大野のブランディングの核にあるのは、
「誰も喜ばない常識にヒビを入れる」という一貫した思想である。
crack株式会社の代表として、国内初となる「企業の誇りをARTで象徴化する」Symboling(シンボリング) 事業を推進。世界中の芸術家約200名と連携しながら、企業が積み重ねてきた歴史や想い、誇りを“語るもの”ではなく、“象徴として立ち上がるもの”として大型ART作品に昇華している。
「常識が壊れた後に出来上がる世界が、真新しい事が重要」だと大野は考える。
見過ごされてきた価値に光を当て、企業と人が「自分たちの誇り」を取り戻すための表現を、今日も生み出し続けている。